考えさせて。告白したあと、そう返ってきた瞬間、あなたは、たぶん、ほっとした。はっきり振られなかった。まだ可能性はある。そう思って、待つことにした。それからの日々、あなたは、相手の一挙一動を、脈ありのサインとして読んだ。遊びの誘いにも応じてもらえた。日常のやり取りは続いている。ほら、いけるかもしれない、と。
そして、二週間後か、一ヶ月後。ごめん、やっぱり友達のままがいい、と連絡が来る。告白を保留にされた挙句、逆に振られた。その落ち込みは、ただ振られたときより、ずっと深い。なぜこんなに苦しいのか。そして、あの保留は、いったい何だったのか。
本当に好きなら、考えさせて、とはなりにくい
まず、いちばん大事なことから言う。人は、本当に付き合いたいと思う相手に、考えさせて、とは、あまり言わない。
好きだ、という気持ちは、たいてい、熟考の対象ではない。相手にちゃんと惹かれているとき、答えは、わりと早く、あたたかく返ってくる。うん、私も、と。逆に、考えさせて、という保留は、多くの場合、もう答えは出ているけれど、はっきりノーと言う踏ん切りがつかない、あるいは、やわらかい断り方を探している、という状態の音だ。つまり、保留は、五分五分の未決ではなく、たいてい、ゆっくり再生されたノーなのだ。もちろん、例外はある。長年の友達からの告白で、本当に不意を突かれて、大事な関係を天秤にかけて悩む、というような、本物の迷いも、確かにある。でも、それは、少数派だと思っておいたほうがいい。
あの保留は、あなたを傷つけるために、まず希望を貸し出した
では、なぜ、保留のあとの拒絶は、こんなにこたえるのか。答えは、間にあった、希望、にある。
すぐに振られていれば、傷は、平らな地面に落ちる。でも保留は、あなたを、積極的に期待する状態に置く。あなたは、待つ間、相手のしぐさを深読みし、未来を思い描き、少しずつ希望を積み上げていく。そして、ノーは、その積み上げた希望の、いちばん高いところから、あなたを突き落とす。だから、落差が大きい。保留は、いわば、希望を、いったんあなたに貸し出す。そして最後に、利子をつけて、回収していく。あなたを苦しめているのは、拒絶そのものというより、期待してもいいよ、と一度言われたあとで、それを取り上げられたこと、のほうだ。だから、速くてはっきりしたノーより、保留を経たノーのほうが、しばしば、残酷になる。
考える時間は、しばしば、もっといい人がいないか確かめる時間だ
ここは、少しきつい話になる。保留の間、相手が何をしていたか、だ。
体験談を並べると、暗い共通点が見えてくる。保留にしておきながら、その間に、他の人とデートを重ねていた。あなたを、保険のように、キープしていた。この場合、その、考える時間、は、あなたと付き合うかどうかを考える時間ではない。もっといい相手が現れないか、を確かめる時間だ。そして、あなたは、その本命が決まるまでの、安全網として、待たされている。誰かの保険にされる、というのは、地味に、こたえる経験だ。でも、ここで、はっきりさせておきたい。それは、あなたの価値が低いから、ではない。ただ、あなたが、その相手にとって、都合よく、そこにいてくれたから、というだけの話だ。キープされたことと、あなたの値打ちは、関係がない。
保留は、待っている間に、それ自体で冷ます
もう一つ、保留には、性質としての問題がある。待っているあいだに、関係を、それ自体で冷ましてしまうのだ。
告白というのは、感情が高く張りつめた、特別な瞬間だ。保留は、その張りつめた空気の栓を、そっと抜く。宙ぶらりんの時間が続くほど、二人の間にあった熱は、少しずつ抜けていく。だから、たとえ本物の迷いだったとしても、保留にしているうちに、自然消滅の方向に転がりやすい。実際、保留にした側が、待つうちに自分の気持ちのほうが冷めてしまった、というケースもある。保留にする人は、可能性を残しているつもりでいる。でも、多くの場合、残しているのではなく、考えているふりをしながら、ゆっくり終わらせているのだ。
もし今、保留の中にいるなら
まだ返事を待っている最中なら、見るべきは、言葉ではなく、相手の行動のほうだ。本物の迷いなら、相手は、悩みながらも、あなたに近い場所にいる。連絡は続き、あたたかさも残っている。逆に、保留という名のノーなら、返事は遅くなり、二人きりを避け、じわじわ距離が開いていく。考え中のはずなのに、温度が下がっていくなら、それは、もう答えが出ている。そして、待つ間、答えを急かして連絡を増やすのは、逆効果だ。それは、相手にプレッシャーを与え、ノーを後押ししてしまう。一度だけ軽く確かめて、あとは、自分の生活を止めないこと。保留は、もっと投資していいという青信号ではない。たぶんノー、そうでなければ儲けもの、くらいに構えておくのが、自分を守る。
逆に振られたからといって、告白を後悔しなくていい
自分から告白して、それが拒絶になって返ってきた。勇気を出して踏み込んだのに、逆に振られた。まるで、正直になったことを、罰されたように感じるかもしれない。でも、そこは、履き違えないでほしい。
告白したことは、間違いではない。言わずにいたら、あなたは、答えの出ない気持ちを、何年も抱え続けることになった。それは、もっと遅くて、もっと静かな、負けだ。告白というのは、相手に、事実と、選ぶ権利を、渡す行為だ。相手が、保留を経て出したノーは、相手の答えであって、あなたの落ち度ではない。そして、痛くても、本当の答えをもらえたことは、宙ぶらりんのまま何年も引きずるより、ずっとましだ。あなたは、告白して負けたのではない。高い授業料を払って、はっきりした答えを、手に入れたのだ。
保留にする側に、なりそうなときは
逆の立場も、一言だけ。もし、あなたが、誰かの告白を、保留にしようとしているなら。
覚えておいてほしい。保留は、たいてい、その関係を、ゆっくり殺す。そして、あなたを、人を宙ぶらりんにして引き延ばした人、にしてしまう。気持ちが固まらないなら、やさしく、はっきり答えるほうが、保留よりずっと誠実だ。ノーでも、そのほうが、相手は早く前に進める。もし、本当に少しだけ時間がほしいなら、ちゃんとした理由と、いつまでに、という期限を伝え、その間も、あたたかさを保つこと。それより曖昧なものは、全部、ゆっくりしたノーになる。
