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彼女が飲み会で朝まで連絡がない。あなたが戦っているのは、彼女じゃない

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スマホを表向きにテーブルに置いて、何度も画面をつける。二十二時、まだ既読がつかない。一時、二時。楽しんで、と送ったあの一言から、沈黙が続いている。頭の中では、悪いシナリオが勝手に再生されはじめる。何かあったのか。いや、他の男と盛り上がっているんじゃないか。眠れないまま、時計だけが進んでいく。

彼女が飲み会で朝まで連絡がない。この状況で検索している人は、たぶん、まさに今その夜の途中にいる。最初に言っておきたい。あなたをこんなに苦しめているのは、彼女でも、飲み会にいる誰かでもない。もっと別の、正体のはっきりしないものだ。

目次

あなたが本当に戦っている相手は、分からない、だ

その夜、あなたが本当に相手にしているのは、飲み屋にいるライバルではない。分からない、という状態そのものだ。

考えてみてほしい。実際には、たいてい何も起きていない。あとで聞けば、スマホの電池が切れていた、楽しすぎて連絡を忘れていた、酔って寝落ちしていた。そんなところだ。つまり、あの数時間の地獄は、飲み屋で起きていたのではなく、あなたの頭の中だけで起きていた。情報が来るはずの場所に、ぽっかり空いた空白。あなたを追い詰めていたのは、その空白のほうなのだ。

人は、宙ぶらりんより、最悪の確定を選ぶ

なぜ、その空白がここまで苦しいのか。人間は、分からない、という宙ぶらりんな状態に、驚くほど耐えられないからだ。

耐えられないから、脳は、とりあえず答えを埋めようとする。しかも厄介なことに、選ばれるのは、たいてい最悪の答えだ。無事に楽しんでいる、という穏やかな可能性より、浮気しているかもしれない、という最悪の可能性のほうを、わざわざ握ってしまう。矛盾しているようだが、人は、宙ぶらりんの不安に耐えるより、たとえ最悪でも、はっきり確定したほうが楽なのだ。その苦しさを早く終わらせたくて、自分で悪い結末を書きにいく。

最悪のシナリオを選んだのは、あなたの不安だ

ここで、少しだけ、自分に向き合ってほしい。空白を埋める答えは、本当は無限にあったはずだ。なのに、あなたが選んだのは、他の男と、という筋書きだった。

それは、飲み屋から届いた事実ではない。あなたの中にある不安が、選ばせた筋書きだ。同じ沈黙を、無事に帰ってくるだけ、と受け取る人もいる。あなたが最悪の絵を選んだなら、その絵を塗った絵の具は、彼女ではなく、あなたの不安から出ている。責めているのではない。ただ、なぜ自分はその結末を選んだんだろう、と一度考えてみると、戦うべき相手が、少し見えてくる。

朝の温度差が、いちばんきつい理由

朝方、今から帰る、と連絡が来る。あるいは、けろっとした顔で、楽しかったよ、と帰ってくる。ぼろぼろになって夜を明かしたあなたと、上機嫌の彼女。この落差が、たぶんいちばんこたえる。

心配なんてどうでもいいのか、と感じてしまう。でも、この温度差の正体を、正しく見たほうがいい。あなたは一晩じゅう、実際には存在しなかったホラー映画の中にいた。彼女は、ただ普通に、楽しい飲み会にいた。二人が過ごした夜が、まるで違うのだ。彼女がけろっとしているのは、あなたを軽んじているからではなく、あなたが一人で見ていた恐怖の映画に、そもそも出演していなかったからだ。だから、帰ってきた彼女を、その温度差のまま責めないほうがいい。彼女が出ていなかった映画の分まで、彼女を裁くことになってしまう。

ただし、心配すること自体は、おかしくない

ここで、逆の方向にも言っておきたい。あなたの不安を、全部、自分の被害妄想だと切り捨てる必要はない。

酔った恋人が、深夜に外にいて連絡がつかない。安否が気になるのは、まっとうな心配だ。これは、嫉妬とは別ものだ。問題を整理すると、あなたの中には、二種類の不安が混ざっている。ちゃんと家に帰れたか、という安全の心配と、他の男とどうにかなっていないか、という嫉妬の想像だ。この二つを、分けて見てみる。前者は、事前のちょっとした取り決めで、きれいに解消できる。後者は、取り決めでは消えず、自分で向き合うしかない。まずは、自分が今どちらで揺れているのかを、見分けることだ。

逐一連絡より、帰るとき一報、のほうがいい

では、安全の心配のほうを、どう片づけるか。ここで多くの人が、間違った方向に力を入れる。逐一連絡して、と頼んでしまうのだ。

これは、たいてい逆効果になる。逐一連絡する約束にすると、連絡が途切れた瞬間に、約束を破られた、という新しい不安が上乗せされる。飲み会に集中していれば、連絡は自然に飛ぶものだ。だから、求めるのは、頻度ではなく一点でいい。飲み会中は無理に連絡しなくていいから、帰るときだけ一報ちょうだい。この形にすると、お互いの自由を保ったまま、最低限の安心が手に入る。多くの人が、この帰るタイミングだけ、というルールに落ち着いている。

短い、今から帰る、がいちばん効く

そして、その一報は、短くていい。むしろ短いほうがいい。

酔っていても、今どこにいて、無事で、これから帰る。それだけ伝わればいい。長々しい言い訳や、事細かな報告は、いらない。今どこにいて安全か、というシンプルな一言のほうが、受け取る側をよほど安心させる。だから、彼女に求めるのも、完璧な報告ではなく、その一言でいい、と伝えておくと、彼女のほうも構えずに送れる。

朝、彼女が帰ってきたら

無事に帰ってきた朝の対応で、その後の空気が決まる。ここで、やってはいけないことがある。開口一番、遊びだったんじゃないか、と問い詰めることだ。

疑いをぶつけられた側は、身に覚えがないほど、信頼を傷つけられたと感じる。かといって、平気なふりをして、ヘラヘラ笑って済ますのも、違う。いちばんいいのは、素直に気持ちを言うことだ。心配したよ、と。責めるのでも、我慢するのでもなく、自分がどう感じたかを、そのまま伝える。不安を、非難ではなく、正直な気持ちとして差し出されると、相手は、次は気をつけよう、と自然に思える。問い詰めは信頼を削り、素直な一言は、信頼を積む。

それでも、毎回モヤモヤするなら

取り決めをしても、素直に話しても、彼女が飲み会に行く夜、分からない時間は、たぶんこれからも少しそわそわする。分からない、に完全に慣れることは、たぶんない。一報の約束は、安全の心配は消してくれるが、その奥にあるそわそわまでは、消してくれない。

ただ、そこは、悪い結末を確定させて片づける場所ではなく、分からないまま、少しだけ持ちこたえる場所だ。もし、どんな取り決めをしても、毎回、頭の中でホラー映画が上映されてしまうなら、その不安は、飲み屋のライバルではなく、もっと別のこと、二人の関係の中の何かか、自分の中の何かを、指しているのかもしれない。それは、大げさに考える話ではないけれど、目を背けなくていい話でもある。分からない夜を、裏切りの証拠に仕立て上げないこと。とりあえず、今夜のところは、それだけで十分だ。

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