楽しみ! いいね、行こう。そう即答してくれたから、あなたは日程を決め、店を予約し、当日を心待ちにしていた。ところが当日の朝、ごめん、急に体調が悪くなって、と連絡が来る。理由は曖昧で、別の日を提案しても、また今度、と返ってきて、そのままフェードアウト。あの、あんなに乗り気だったやり取りは何だったんだ、と、はしごを外された気分になる。
一度OKした誘いを断る女性に、何度も振り回されると、正直、腹も立つし、自分に興味がなかったのかと落ち込む。でも、その怒りとモヤモヤを解くには、まず一つ、知っておいたほうがいいことがある。あなたが受け取ったあのOKは、たぶん、あなたが思っていた種類のものではなかった。
OKには、二種類ある
まず、いちばん大事なところから。人が口にするはいには、まるで値打ちの違う二種類がある。
一つは、その場の、軽いはいだ。断るのが気まずいから、とりあえず頷いておく。話の流れで、いいねと返しておく。これは、言うのにコストがかからない。もう一つは、本気のはいだ。自分の予定を組み替え、その日をあなたのために空ける、という覚悟のこもったはい。あなたが振り回されるのは、たいてい、前者の軽いはいを、後者の本気のはいだと思い込んで、予定を組んでしまったときだ。口で言うだけのはいは、いくらでも刷れる。問題は、それを本物の約束として貯金してしまうことにある。
楽しみ!ほど、当てにならないことがある
ここが、直感に反するところだ。人は、楽しみ!!と勢いよく返されると安心し、うん、いいよ、と淡々と返されると不安になる。でも、実際はしばしば逆になる。
勢いのいい即答は、その場の空気に乗った、断らないための反射であることが多い。会話のテンポがよかった相手ほど、あとで急に距離を置かれる。ノリのいい返事ほど、少し注意したほうがいい。これは、多くの人が痛い目を見て学んでいることだ。逆に、少し落ち着いたはいでも、それなら何曜日がいい、と相手のほうから具体的な話を出してきたら、そちらのほうが、ずっと本物に近い。声の大きさと、本気度は、比例しない。
承諾と、実行は、別の行為だ
もう一つ、押さえておきたい。はいと言うことと、実際に来ることは、まったく別の行為だ。
はいと言うのは、その瞬間の、気まずさを避けるための承諾でしかない。実際に来るのは、その日、ほかに起きるすべてのことより、あなたを優先する、という実行だ。だから、当日のキャンセルは、必ずしも嘘をつかれたわけではない。多くの場合、彼女はその場では本当にそう思っていた。ただ、軽い承諾と、身銭を切った実行の間には、大きな溝がある。その溝に落ちただけ、ということも、案外多いのだ。
なぜ、本心じゃないのにOKするのか
では、なぜ女性は、迷いがあるのに、一度OKしてしまうのか。理由は、悪意ではないことがほとんどだ。
断るのが申し訳ない、傷つけたくない。優しい人ほど、その場で頷いて、あとから、やっぱり、と悩む。あるいは、複数の相手とやり取りしていて、あなたの優先順位が高くなく、自然に後回しになっていく。ノリでいいねと言ったものの、現実に近づくと、面倒くささが勝ってしまう。三十代以降なら、仕事や家庭の都合が本当に入り組んでいて、動かせない用事が割り込んでくることも多い。どれも、あなたを馬鹿にしているのではなく、それぞれの事情が、軽いはいを上書きしただけだ。
あなたの押しが、その場のはいを作っている
ここは、少し耳が痛いかもしれない。相手が本心でないのにOKしてしまう背景に、こちらの誘い方が関わっていることがある。
熱意たっぷりに、強く誘われると、断るほうにコストがかかる。ノーと言いづらい空気ができると、人はその場を切り抜けるために、とりあえずイエスと言ってしまう。そして、あとでキャンセルする。つまり、押しの強い誘い方が、その場しのぎのはいを、自分で生産していることがある。逆説的だが、断りやすくしてあげたほうが、あなたが受け取るはいの本気度は、上がるのだ。
あなたにできるのは、イエスを引き出すことではなく、ノーを軽くすること
ここから、対応の話になる。多くの人は、方向を間違える。どうにかしてイエスを固めよう、逃げられないように予定を詰めよう、とする。でも、これは効かない。
覚えておいてほしい。あなたは、本物のはいを、力ずくで引き出すことはできない。できるのは、ノーの値段を下げてやることだけだ。押せば、その場の従順は得られる。でも、来るという実行は、押しでは買えない。無理なら全然大丈夫だよ、と、断ってもいい空気を先に作る。すると、そこで返ってくるはいは、断る選択肢がある中で、それでも選ばれたはいになる。断っても平気だと思える相手にだけ、人は、本物のはいを渡せる。
言葉より、行動を見る
本気度を測りたいなら、返事の熱量ではなく、行動を見るのが確実だ。
見るべきは、相手が自分から予定を進めようとするかどうかだ。それなら何日がいい、この店どう、と、向こうから話を前に転がしてくるか。当日が近づいて、確認の連絡に、すぐ具体的な返事が来るか。ここに本気度が出る。逆に、返事が毎回遅く、いつも曖昧で、具体的な話になると濁される。それは、リスクが高いサインだ。楽しみ、という言葉を百回もらうより、向こうから店を一軒挙げてくれるほうが、よほど当てになる。
一回のドタキャンと、三回のパターンは、別物だ
ここで、冷静さも一つ。一度キャンセルされたくらいで、深刻に受け止めすぎないことも大事だ。
特に、社会人や、家庭のある相手なら、上司に急な仕事を振られた、子供の用事が入った、というのは、本当に起きる。一回のドタキャンは、ただの雑音のことが多い。問題は、繰り返されるときだ。一度OKしては前日や当日に消える、というのが三回続いたら、それはもう雑音ではなく、優先順位が低い、というはっきりした信号だ。一回で落ち込まず、三回を見逃さない。そして、その信号は、たいてい、あなたに価値がないという意味ではなく、今の相手にとっての優先度が低い、という意味でしかない。そこを取り違えて、自分を責めないことだ。
具体的な、負担の軽い誘いにする
実際の誘い方も、少し工夫できる。まず、OKをもらったら、なるべく早く、日時と場所を具体的に固めてしまう。曖昧なまま置くほど、軽いはいは、いつのまにか蒸発する。
そして、初回は、相手の負担を軽くする。いきなり長時間の食事ではなく、三十分だけカフェ、散歩がてら少し、くらいから始める。これは駆け引きではなく、来るという実行のハードルを、物理的に下げてあげる工夫だ。相手が空けなければならない時間と気力が少ないほど、本物のはいは出しやすくなる。それから、本物のはいをもらうまでは、一人に絞りすぎないこと。並行して人と会う余裕があれば、一回のキャンセルで、世界が終わったようにはならないよね。
