打ち合わせ中、隣の女性が、話の途中で、何度も腕や肩に、軽く触れてくる。笑った拍子に、腕を掴まれる。資料を渡すときに、指が触れる。その瞬間、頭の中で、ある問いが、点滅する。これは、好意なのか。それとも、深い意味は、ないのか。
女性のボディータッチの意味を知りたい、なんとかしたい。触られると、期待していいのか、勘違いなのか、その場で、判定したい。でも、その判定を、触れられた、という事実そのものから、下そうとするかぎり、あなたは、たぶん、外し続ける。
同じ触れ方が、まるで違う意味を持つ
誰にでも肩をポンと叩く、親しみの癖の人がいる。友達だから距離が近いだけ、と、自分から説明してくれる人がいる。一方で、言葉で好きと言えない代わりに、身体の距離で気持ちを伝えようとする人もいる。静かな性格で、触れると安心する、と小さな声で言い、そのまま交際に発展した人もいる。まったく同じ、腕に触れる、という動作が、片方では、ただの癖で、もう片方では、精一杯の告白なのだ。だから、触れられたかどうか、で好意を測ろうとするのは、最初から、無理がある。動作だけを切り取っても、意味は、そこには、書かれていない。
触れ方ではなく、その人の「普段」を見る
では、どこを見れば、いいのか。触れる、という一点ではなく、その人が、普段、どういう人か、を見る。
いつも、誰にでも、ボディータッチをする人が、あなたに触れても、それは、何も意味しない。それが、その人の、デフォルトだからだ。逆に、めったに人に触れないタイプの人が、あなたにだけ、距離を縮めてくるなら、そこには、意味があるかもしれない。判断の材料は、あなたに触れたか、ではなく、その人が、あなた以外の人にも、同じことをしているか、のほうにある。周りを、少し観察すればいい。あの人は、他の同僚の肩も、同じように叩いているか。他の友達とも、同じくらいの距離で笑っているか。普段との差。それが、動作そのものより、ずっと多くを語る。
一方的な思い込みが、いちばんの事故のもと
女性のボディータッチで、いちばんトラブルになるのは、触れられたこと、そのものではない。触れられた側が、勝手に、意味を足すこと、のほうだ。
友達だから距離が近いだけ、と説明してくれた女性の言葉に、ある男性は、安心すると同時に、こう感じている。男性側が勝手に期待してしまうと、誤解が生まれるんだな、と。これは、核心を突いている。触れられた瞬間、脈ありだ、と結論を出して、そこから、相手の全部の行動を、その色眼鏡で見はじめる。すると、ただの親しみが、特別な好意に見え、行動が、暴走していく。相手は、何も変えていないのに、あなたの中だけで、話が、進んでいく。ボディータッチを、脈ありの証拠として受け取る前に、それは、まだ、証拠ではなく、あなたの解釈にすぎない、と、一度、立ち止まったほうがいい。
女性からのボディータッチでも、嫌なものは、嫌でいい
そして、この話には、まったく別の側面が、ある。ボディータッチを、好意かどうか、という問いだけで語ると、大事なことを、見落とす。それは、望んでいない接触は、相手が女性でも、迷惑だ、という事実だ。
体験談には、こういう話がある。飲み会で、面識の薄い女性が、酔って、執拗に太ももや背中に触れてきた。やめてほしい、と伝えたら、冗談なのに堅いね、と、逆に不機嫌になられた。休憩室で、年上の女性が、若い男性社員の肩を揉む。本人は親切のつもりだが、触られる側は、毎回びくっとしている。でも、年上だから、断れない。
ここで、はっきりさせておきたい。女性からの接触だから、喜ぶべき、という決まりは、ない。あなたが、不快だと感じたなら、その感覚は、正しい。相手の性別も、年齢も、それを変えない。そして、上下関係があると、断りにくい空気が生まれる、というのも、本当だ。だからこそ、これは言っておく。嫌なものを、嫌だと感じる自分を、心が狭い、とか、男のくせに、とか、責める必要は、まったく、ない。
触れる側になるなら、相手の体は、正直だ
逆に、あなたが、ボディータッチをする側なら。ここも、知っておいたほうがいい。触れることは、簡単に距離を縮められる。でも、相手の気持ちを、確認しないままやると、簡単に、逆効果になる。
好きな人に、会話の流れで、腕に触れた。でも、相手が、体を強張らせた。やりすぎたかも、と後悔した。そういう体験を、女性の側も、している。ここに、大事なヒントがある。触れられた相手の体は、言葉より、正直だ、ということだ。相手が、自然に受け止めているか。それとも、一瞬、こわばったか、さりげなく距離を取ったか。その、体の反応を、見ていれば、続けていいか、引くべきかは、分かる。触れる頻度を、相手の反応を見ながら調整する。それが、できる人と、できない人の差は、大きい。相手の体は、いつも、答えを返してくれている。それを、見ようとするかどうか、だけだ。
触れ合いが、意味を持たない関係もある
もう一つ、視野を広げておきたい。ボディータッチを、いつも、恋愛の文脈で読むと、これも、見誤る。
女性同士の旅行で、肩を組み、髪をいじり、腕を組んで歩く。男性同士では、あまり見ない近さだ。彼女たちに聞くと、特別な意味はない、安心できる相手だから、自然にそうなる、と返ってくる。つまり、触れ合いには、恋愛とはまったく関係のない、ただ安心を分かち合う、という用途が、ちゃんとある。男女の間でも、それと同じ、気軽に触れ合えるだけの関係、というのは、成立する。だから、女性が触れてきた、イコール、恋愛、という一本の線だけで読むと、実際には何本もある可能性を、一本に、つぶしてしまう。
触れられた事実ではなく、返ってくるものを見る
きれいにまとめるつもりはない。女性のボディータッチの意味は、状況と、関係性と、その人の性格によって、大きく変わる。だから、これをされたら好意、という便利な答えは、この記事にも、書けない。
ただ、一つだけ、指針を置くとすれば、これだ。触れられた、という事実そのものではなく、そこから、何が返ってくるか、を見ること。あなたが、少し距離を縮めてみたときに、相手が、さらに近づいてくるのか、さりげなく引くのか。その、往復の中に、答えは、少しずつ、現れてくる。一回のボディータッチは、問いの始まりであって、答えではない。焦って、一つの接触に、脈ありの判定を下すのをやめて、相手の反応を、時間をかけて、読む。そして、あなた自身が触れられて不快なら、その気持ちも、ちゃんと、答えの一部に入れる。思い込みで先走らないこと。それが、この、解釈の分かれやすい仕草と、いちばん、うまく付き合う方法だ。
