同年代や年下の女性と付き合っては、会話が続かない、価値観が合わない、と別れる。それを何度か繰り返したあと、ある日、年上の女性と話して、はっとする。妙に、楽なのだ。気を張らなくていい。無理にリードしなくていい。一緒にいて、心が休まる。
姉さん女房を好む男性の特徴、と検索すると、包容力に惹かれる、甘えたい、母性を求めている、といった説明が並ぶ。それも、間違いではない。ただ、その説明は、いちばん核心の部分を、うまく言い当てていない。彼らが求めているのは、年上、そのものではないからだ。
彼らは、年上を選んだのではない。演技をやめられる場所を選んだ
姉さん女房を好む男性の話を並べると、繰り返し出てくる言葉がある。楽だ。自然体でいられる。気を使いすぎなくていい。心が休まる。
ここに、答えがある。裏を返せば、彼らは、それまでの恋愛で、ずっと、演じていた、ということだ。同年代や年下の相手と付き合うと、常に、リードしなければならない気がしていた。頼れる男に見せなければ、と思っていた。自分がお兄さんの役をやらされている、と感じていた。その役を、降りられなかった。年上の女性の前で、彼らが感じているのは、包容力に包まれる喜び、というより、その、ずっと続けていた演技を、ようやく、やめていい、という解放だ。だから、姉さん女房を好む男性の特徴は、年上が好き、ではない。演じずに済む場所を、探している、というほうが、ずっと近い。
求めているのは、若さの反対ではない
ここは、誤解されやすいところだ。年上が好き、と聞くと、若さを求める男性の、正反対の趣味のように聞こえる。でも、実際は、そうではない。
彼らが避けているのは、若さそのものではなく、若い相手と一緒にいるときに、自分が背負わされる役割のほうだ。教える側、引っ張る側、間違えられない側。その役が、しんどい。ある人は、若い頃に年下や同年代と付き合ったけれど、いつも自分がリードしなければならず、疲れた、と話す。彼が求めたのは、若くない相手、ではなく、リードしなくていい関係だった。だから、年齢は、本当は、本体ではない。年齢は、その関係の空気を決める、条件の一つにすぎない。
過去に、しんどい役をやらされていた人ほど、こうなる
なぜ、その演技が、そんなに重かったのか。背景をたどると、いくつかの型が見えてくる。
一つは、常に、自分が答えを持っていなければならなかった人だ。彼女の悩みを解決し、将来を設計し、判断を下す。頼られるのは悪くないが、その役を、ずっと一人で担い続けるのは、削られる。一つは、二度の離婚を経て、地に足のついた相手が欲しい、と願うようになった人。もう一つは、姉がいる家庭で育ったなどの理由で、そもそも、年上の女性といるときの空気に、慣れている人。育ちの中で、年上の女性と対等に過ごすやり方を、体で覚えている。だから、年下といると、逆に、しっくりこない。
どの型にも、共通しているものがある。年上の相手のそばで、彼らは、ようやく、荷物を下ろせる、ということだ。仕事の愚痴を、そのまま話せる。分からないことを、分からないと言える。弱い部分を、隠さなくていい。それが、心地よさの正体だ。包容力に惹かれる、という言い方は、正確には、包容力そのものというより、そこで、ようやく、素の自分に戻れる、ということなのだ。
休むことと、丸投げは、違う
ここで、正直な線を、一本、引いておきたい。荷物を下ろせるのは、いいことだ。ただ、それが、荷物を、相手の肩に、そっくり載せ替えることになっていないか。ここは、分けて考えたい。
休むというのは、二人の間で、荷物を、行ったり来たりさせられることだ。今日は、彼女が支えてくれる。別の日は、こちらが支える。この往復があるなら、健全だ。丸投げは、違う。感情の面倒も、人生の判断も、日々の段取りも、全部、彼女が引き受け、自分は、ただ甘えている。楽になっているのは、片方だけ。彼女は、恋人であると同時に、無償の相談役であり、母親役であり、生活の管理人になっていく。そして、当の本人は、それを、包容力のある人だ、と呼んで、疑わない。姉さん女房が疲れるとしたら、たいてい、年齢差そのもののせいではない。この、片道の荷物運びが、続いたときだ。
ママみたい、を、笑って済ませていいか
だから、ママみたい、と言われる関係を、ひとつの目安に使うといい。それが、二人が笑い合える、じゃれ合いの冗談として交わされているなら、なんの問題もない。でも、それが、実態そのものになっているなら、話は別だ。恋人が、いつのまにか、あなたの母親の役を、無給で、担わされている。彼女が、あなたの前で、疲れたと言えたり、弱音を吐けたり、判断を委ねられたりしているか。そこを、たまには、確かめたほうがいい。関係が対等かどうかは、あなたがどれだけ癒されているかではなく、彼女が、あなたに、寄りかかれているかで、分かる。
年上の女性の側にも、ちゃんと理由がある
この話は、男性側の心理ばかりが語られがちだが、選ばれる側の女性にも、選ぶ理由がある。彼女たちは、単に、慕われて舞い上がっているのではない。
年下の相手といると、素直に頼ってくれる。感謝を、言葉にしてくれる。自分の経験が、ちゃんと役に立っていると実感できる。上下や見栄の張り合いが少なく、話が早い。あるいは、家事や育児に、当たり前のように参加してくれる。年上の女性が年下を選ぶのは、若さに惹かれたからというより、自分を、ちゃんと尊重してくれる相手だったから、ということが多い。だから、この関係は、母と息子ではなく、二人の大人が、それぞれの理由で、選び合った結果だ。
世間の目より、時間差のほうが、現実的な課題だ
年齢差のある結婚で、周りから何か言われる。親に反対される。それは、たしかに、ある。でも、時間をかけて誠実に向き合えば、たいていは、収まっていく。世間の目は、いちばんの問題では、ない。
もっと現実的なのは、二人が、人生の別の段階を、少しずれた時期に迎える、ということだ。彼女の定年が、先に来る。体の変化や、健康の問題が、時期をずらしてやってくる。子どもを考えるなら、その時間の見積もりも、二人で共有しておく必要がある。そして、いつか、どちらかの介護が、先に始まる可能性も、ある。これは、暗い話ではない。むしろ、年齢差のあるカップルほど、こうしたことを、早い段階から、具体的に話し合える、という強みがある。ずれているからこそ、見ないふりが、できない。健康や、将来のことを、早くから話せているのが強みだ、と語る夫婦がいるのは、そういうことだ。
